Interview

高炉-転炉法に代わる新たな製鉄プロセスで、
鉄鋼業の未来を切り拓く。

JFEスチール株式会社

Profile

三代 大和

JFEスチール株式会社
西日本製鉄所(倉敷地区)
電気炉建設班

千葉地区の製鋼部門にて、主に高炉-転炉法における精錬技術の開発に従事。転炉でのスクラップ利用量拡大プロジェクトに参画してから副工場長も務めた後、新たな製鉄プロセスに向けた電気炉建設検討メンバーに抜擢される。倉敷地区の電気炉建設班に異動し、現在は電気炉鋼材の製鋼プロセス設計と設備仕様の検討を手がける。

Profile

三代 大和

JFEスチール株式会社
西日本製鉄所(倉敷地区)
電気炉建設班

千葉地区の製鋼部門にて、主に高炉-転炉法における精錬技術の開発に従事。転炉でのスクラップ利用量拡大プロジェクトに参画してから副工場長も務めた後、新たな製鉄プロセスに向けた電気炉建設検討メンバーに抜擢される。倉敷地区の電気炉建設班に異動し、現在は電気炉鋼材の製鋼プロセス設計と設備仕様の検討を手がける。

国内屈指の鉄鋼メーカーとして鉄鉱石を原料に最終製品の鋼材の生産までを一貫して行うJFEスチール。自動車や船舶、家電などさまざまなところで用いられる高品質な鋼材を生み出し続けてきた同社は、高炉-転炉法に代わる新たな製鉄プロセスとして、西日本製鉄所(倉敷地区)に革新的な大型電気炉を導入するプロジェクトを進めている。本プロジェクトにて電気炉建設に携わる三代大和さんに、プロジェクトの目的と想いを聞いた。

電気炉で、製鉄のあり方そのものを変える

石炭を用いて鉄鉱石から鋼材を生産する高炉-転炉法では、鋼材を1トンつくるのに約2トンのCO₂を排出するため、脱炭素化が大きな課題となっています。そこで今私たちが取り組んでいるのが、電気によって鋼材を生み出す電気炉への転換プロジェクトです。一度使われた鉄スクラップを電気によって溶かして再利用することで、CO₂排出量を大きく抑えられる革新電気炉の開発に挑んでいます。

電気炉で、製鉄のあり方そのものを変える

私はプロジェクトチームの一員として、精錬プロセスの技術開発と設備・運転方案の検討を担当しています。入社以来一貫して高炉-転炉法に携わってきたため、正直当時は電気炉について全く知識がありませんでした。しかし、当時の上司である東日本製鉄所(千葉地区)の製鋼部長に「本社で革新電気炉の検討を本気で
やってほしい」と言われ、電気炉について調べはじめてからは、その重要性や未来に向けた挑戦の奥深さにワクワクするようになったのです。その後、本社で検討を進めるうちに、どうせなら机上の空論で終わらせずに実際の設備導入まで責任を持ちたいと思い、現場と連携して進められる西日本製鉄所(倉敷地区)への赴任を希望しました。倉敷に行きたい旨を伝えた際、嫌な顔ひとつせずに一緒に引越そうと言ってくれた家族には感謝してもしきれません。

常識が通用しない領域に挑む難しさ

本プロジェクトの最大の課題は、これまで高炉-転炉法でしか安定してつくれなかった高品質鋼材を、革新電気炉で実現しようとしている点です。スクラップを原料とする電気炉では不純物が混じりやすく、リンや窒素等の不純物元素の低減・制御に取り組んでいく必要があります。加えて、今回目指しているのは年間200万トン規模という高い生産性の達成であり、高炉-転炉法並みの稼働率に耐える設備設計も必要です。つまり、これまでの製鉄・製鋼生産の常識が通用しない領域に踏み込んでいるため、すべて手探りで進めていかなくてはいけません。

さらに、営業、研究所、設計、現場オペレーター、協力会社など、多くの関係者が関わる中で方向性を揃えていく難しさもあります。それぞれが異なる立場で仕事をしている以上、そのままだとどうしても考え方や優先順位がずれてしまい、全体としてうまくかみ合わなくなることがあるため、「革新電気炉で200万トンの高品質鋼材をつくる」という共通目標をぶらさず、何度も方向性をすり合わせる必要があるのです。課題は山積みですが、まずは自分にできることをやろうという想いから、できる限り本音で対話することと、できるだけ専門用語を使いすぎないことを心がけています。年次や立場に関係なく意見を投げ合えるようチャットなどで気軽にやりとりしたり、相手に合わせて専門用語を分かりやすい表現に置き換えたりなど、一見小さなことのようですが、そうした日々の心がけがチーム力を高めて課題を突破することにつながると信じています。

常識が通用しない領域に挑む難しさ

社会にも、現場にも意味がある改革をしたい

鉄鋼業がCO₂削減に取り組むことは、社会全体の脱炭素化を前に進める上で非常に大きな意味を持つはずだという想いが、このプロジェクトに取り組む動機につながっています。というのも、鉄鋼業のCO₂排出量は日本の産業部門の30%以上を占め、産業別では最多と言われているためです。CO₂排出量だけを見れば課題の多い産業のように映るかもしれませんが、裏を返せば、それだけ社会に必要とされている素材であるということでもあります。つまり革新電気炉の立ち上げは、鉄鋼業に対する社会のニーズに応え続けるためにも必要不可欠なのです。

同時に、現場の人にとって使いやすく、「やってよかった」と言ってもらえるような設備をつくりたいという想いもモチベーションになっています。以前千葉で大規模な設備投資プロジェクトに携わった際、実際に設備を使うオペレーターの方から「この建設、やってよかったね」「使いやすくなったよ」と言っていただいたことがあり、設備投資は現場に価値を残してこそ意味を持つものなのだと実感したからです。今回のプロジェクトでも、現場のオペレーターの方々から感謝していただけるような仕事にしたい。そのため、GXという大きなテーマを達成できるか、最終的に現場に価値を残せるか、という二つの軸を大切にしながらこのプロジェクトに取り組み続けたいです。

現場力を、次の挑戦につなげたい

まずは、革新電気炉を無事に立ち上げることが直近の目標です。その上で、立ち上げて終わりではなく次の成長へとつなげていくことにこそ意味があると考えています。
革新電気炉によって新たな環境価値を持つ鋼材を市場に届け、そこで得た収益や技術を次のGX投資へと循環させていく。そうした流れを持続的に回していくことが、これからの鉄鋼業には求められています。そして、それを支える基盤となるのが現場力であり、当社には長年継承してきた技術と知識があると自負しています。その力を活かし、会社としての強みも、一人ひとりのスキルも伸ばしていけたらと思います。今回の革新電気炉プロジェクトは、そうした現場力をさらに押し上げるきっかけになるはずです。

また、このプロジェクトを成功させた先には、国内で資源を循環させていきたいという思いがあります。本来であれば、国内で出た資源は国内で活用し、循環させていくのが望ましいですが、現在は鉄スクラップの一部は海外に輸出されているのが実情です。今回の取り組みによってスクラップから高品質な鋼材を国内で生み出せるようになれば、環境負荷の低減にとどまらず、産業としての持続性や競争力の向上にもつながっていくと思います。今後も、鉄鋼業の未来への視点も忘れずに、目の前のプロジェクトにとことん向き合っていきたいです。

現場力を、次の挑戦につなげたい