Interview

国内初の洋上風車タワーの製造に挑む。
風力発電が当たり前になる未来を目指して。

株式会社 駒井ハルテック

Profile

内村 直弘

株式会社駒井ハルテック
洋上風車タワー部長

橋梁設計を担当した後、生産情報課にて工場生産に関わる情報処理を担う。その後、製造課へ異動し、生産計画・製造計画・設備投資計画などを経験。ものづくりの上流から下流まで横断的に携わった後、洋上風車タワー製造に向けた生産技術確立プロジェクトに参画。現在は洋上風車タワー部の部長として事業を統括している。

Profile

内村 直弘

株式会社駒井ハルテック
洋上風車タワー部長

橋梁設計を担当した後、生産情報課にて工場生産に関わる情報処理を担う。その後、製造課へ異動し、生産計画・製造計画・設備投資計画などを経験。ものづくりの上流から下流まで横断的に携わった後、洋上風車タワー製造に向けた生産技術確立プロジェクトに参画。現在は洋上風車タワー部の部長として事業を統括している。

総合鋼構造エンジニアリング企業として、橋梁や鉄骨、再生可能エネルギー設備などの設計・製作・建設を手がける株式会社駒井ハルテック。同社は現在、国内初となる洋上風車タワー製造の生産技術確立に取り組んでいる。プロジェクトの最前線で現場を率いる内村直弘さんに、取り組みの実態と、そこに込められた想いを聞いた。

モノを支える技術で、洋上風車のタワーに挑む

私たちの会社は、橋梁や高層ビルの鉄骨といった構造物を作る、道路や建物を支える仕事をしてきました。また、300kWの中型の風力発電機の製造と設置を通して、風力発電の世界にも関わってきました。そうした鋼構造物の設計・製造で培ってきた経験や技術と風力発電の経験を活かして現在取り組んでいるのが、洋上風車の発電機を支える洋上風車タワーを製造するための生産技術の確立です。これまで風車は陸上に設置するのが一般的でしたが、陸上では運搬できる大きさに制約があったり、土地利用や騒音問題による周辺住民との調整が必要だったりと、さまざまな課題が生じていました。一方、洋上に設置した場合はそうした制約は少なくなり、大規模な設備によって多くの電力を生み出すことが可能になります。そのため、洋上風力発電には大きな期待が寄せられているのです。

私がこのプロジェクトに関わることになったのは、洋上風車タワー製造に関する資料作成を手伝ってほしいと声をかけられたことがきっかけでした。その後、プロジェクトが本格的に立ち上がることになり、継続して参画することに。現在は洋上風車タワー部の部長として、製造体制全体の構築を担当しています。今思えば、橋梁設計、生産情報、製造など、ものづくりの最初から最後までの工程に携わってきた経験を活かしてほしいという意図のもと、プロジェクトメンバーに選ばれたのかなと思います。その期待に応えたいとは思いつつ、資料作成の段階から「この挑戦は相当難しいぞ」と感じていたので、大きなプレッシャーがありました。

最大の課題は、タワーの「大きさ」

進める上で最大の課題となったのは、ズバリ「大きさ」でした。タワーの直径は最大10メートル、部材の長さは40メートル、重量は約500トンもあり、例えるなら二車線道路のトンネルを製造しているようなサイズ感です。また、海上輸送によって運ばれることを前提としており、陸上輸送の制約を受けません。一方、これまで私たちが扱ってきた橋梁や鉄骨は幅・高さが3メートル前後、長さも20メートル前後で重さは20トンほどの、トラック輸送を前提としたサイズで設計されています。普段扱っているものとはサイズが桁違いなため、単にタワーの製造方法を考えるだけでなく、設備そのものを大型化する必要があったのです。

組み立て方も運び方も、すべてを新たに考えなくてはならず、道のりは困難を極めました。橋梁や鉄骨の製造の経験はそのままでは通用せず、現場の職人さんたちの経験も通用しないことが多数ある一方で、「やったことがないからできない」と言ってしまえば前に進まない。そのため皆で知恵を絞り、仮説をもとにひたすら試しながら一歩ずつ地道に進めていきました。また、巨大構造物である以上、小さなミスでも大きな事故につながりかねません。安全面では保守的に考えながら、新しい方法を模索していく必要があり、挑戦と慎重さの両方を求められる取り組みだったと思います。

最大の課題は、タワーの「大きさ」

前例がないからこそ、やりがいがある

先ほどお話しした難しさは、困難で苦しいことではありますが、仕事としての面白みのある部分でもあります。解決方法を皆で議論し、「これでいけるかもしれない」という方法を見つけ出す。それが実際にうまくいったときには大きな喜びを感じますし、失敗したとしても「では次はどうするか」とまた話し合いが始まるんです。現場と技術側が一緒になって取り組む、その過程自体に大きなやりがいを感じました。こうしてがむしゃらに進めていくうちに、以前は気づかなかった海外の工場設備の細かな違いが分かるようになるなど、自分の成長を感じる場面も増えました。

また、自分たちの挑戦が日本のエネルギー自給率を高めることにつながるというのもモチベーションになっています。日本はこれまで、化石燃料をはじめとするエネルギー資源の多くを海外に依存してきました。また、化石燃料に代わるさまざまな再生可能エネルギーの活用も進めてきましたが、すべての電力需要に応えることはできていません。しかし日本には、世界第6位※を誇る広大なEEZ(排他的経済水域)があります。この海域を活かして風力発電を広げることができれば、未来を変えていけるはずです。これは国の歴史で見ても、非常に大きな意味を持つ取り組みになると思っています。

※内閣府HP 海洋政策『海洋開発等重点戦略について』

前例がないからこそ、やりがいがある

風力が、当たり前に使われる未来のために

今後の目標としてまず目指しているのは、洋上風車タワーを安定して製造できる体制を確立していくことです。そのためには工場の整備を進めるとともに、品質管理や生産管理の仕組みを整え、複数の拠点へ展開できる状態をつくっていく必要があります。やるべきことはまだ多くありますが、将来的には日本の風車を日本で作ることが当たり前になり、それが結果として低炭素社会の実現にもつながっていくと思います。ただ、電力を使う側の立場からすれば、それがどのエネルギーから生まれているのかを日常的に意識することは多くありません。社会を支える仕事とは、本来そうした「意識されない状態」を維持し続けることなのだと感じています。今はまだ洋上風車が新しい取り組みとして注目されていますが、将来的には特別なものではなく、「当たり前につくられ、当たり前に発電している」存在にしていきたいと考えています。

GX(Green Transformation)も、決して一度に起こる大きな変化ではなく、現場での挑戦が連鎖していくことでかたちづくられていくものではないでしょうか。失敗の可能性があっても挑戦を続けることで、やがてそれが社会の「次の当たり前」になっていく。そう信じて、これからも挑み続けたいです。

風力が、当たり前に使われる未来のために