Interview

水素社会の実装を、山梨から加速させる。
カナデビア社とともに描く、GXの次のス
テージ。

YAMANASHI x Kanadevia

Profile

長崎 幸太郎

山梨県知事

1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省、在ロサンゼルス総領事館領事、山梨県企画部総合政策室政策参事などを経て、衆議院議員を務める。
2019年より山梨県知事。水素をはじめとする成長分野を地域の産業へとつなげ、山梨県の新たな価値創出に取り組んでいる。

※所属・役職は取材時(2026年6月)のものです。

Profile

長崎 幸太郎

山梨県知事

1968年生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省、在ロサンゼルス総領事館領事、山梨県企画部総合政策室政策参事などを経て、衆議院議員を務める。
2019年より山梨県知事。水素をはじめとする成長分野を地域の産業へとつなげ、山梨県の新たな価値創出に取り組んでいる。

※所属・役職は取材時(2026年6月)のものです。

再生可能エネルギーを水素に変え、貯め、運び、使う。P2G(Power to Gas)システムは、太陽光など発電量が変動する再生可能エネルギーを、水素という形で活用しやすくする仕組みだ。山梨県はこの技術の実証を重ねながら、水素を社会の中でどう生かしていくかを長年にわたり探ってきた。その歩みは今、カナデビア株式会社(以下:カナデビア社)の投資によって新たな局面を迎えている。山梨県が積み重ねてきた知見と、カナデビア社の製造力が重なることで、水素社会の実装はどこまで加速するのか。山梨県はなぜ水素に可能性を見出し、カナデビア社とともにどのような未来を描こうとしているのか。長崎幸太郎知事の言葉から、その背景と展望をひもといていく。

水素の可能性を見出し、実装の土台を築いてきた歴史がある

山梨県が水素に取り組んできた背景には、再生可能エネルギーを地域の新しい力に変えていきたいという思いがありました。水力発電や太陽光発電で生み出した電力をその場で使うだけでなく、必要な時に使える形で蓄えておくことができれば、再生可能エネルギーは地域にとってさらに頼もしい資源になります。その有力な手段として注目したのが水素でした。電力を水素に変えることで、エネルギーを貯蔵し、運び、さまざまな場面で活用できるようになる。そこに山梨県は、脱炭素にとどまらない新しい産業の可能性を見出してきたのです。加えて、山梨大学では半世紀ほど前から燃料電池の研究が進められ、全国的にも先進的な知見が蓄積されてきました。さらに県内では、P2Gシステムを核に、水素活用の一連の仕組みを社会の中で実際に動かしてきました。研究としての知見と、実証を通じて得られる運用の知見。その両方を積み重ねながら、企業、大学、研究機関、行政が顔の見える関係で連携するエコシステムが育ってきたことは、山梨県にとって大きな強みになっています。

一方で、こうした取り組みが最初から広く知られていたわけではありません。どれほど優れた技術や大きな可能性があっても、社会に知られ、使われるところまで届かなければ、未来を変える力にはなりません。だからこそ、山梨県として自ら伝えていく必要がありました。国の関係者やメディアに、米倉山で進めているP2Gシステムの取り組みを見ていただく機会をつくったのもその一つです。山梨県で何が起きているのか、それがこれからのエネルギー社会にどうつながるのかを一つひとつ伝えていく。そうした発信を重ねることで、水素を社会の中で動かすための知見と関係性も蓄積されていきました。その蓄積があったからこそ、次の段階へ進むためには高い製造力を持つ企業との連携が欠かせないという課題が明確になっていったのです。

自信を持って、企業を迎えられる環境を

水素の実証を重ねる中で、私たちが次に見据えたのは、社会実装を広げるための供給力でした。水素を使いたい、導入したいという企業や地域が増えても、水素をつくる装置そのものが十分に供給されなければ、普及は進みません。特に水素製造装置の重要部品である水電解スタックの製造能力は、今後のP2Gシステム普及におけるボトルネックになり得るものでした。だからこそ山梨県は、国や関係機関とも相談しながら、カナデビア社に対して新たな製造拠点の必要性を伝えていきました。そして、工場をつくるのであればぜひ山梨県に来ていただきたいと、私自身も直接足を運び、繰り返しお願いをしてきたのです。

そこまでして来ていただきたいと考えたのは、山梨県こそがカナデビア社にとって最良の選択になり得るという確信があったためです。山梨県には、先ほど話したように研究機関の知見やP2Gシステムの実証フィールドが整備されている。加えて、県内産業には高品質な部品や材料を供給できる力もあり、製造拠点を支えるサプライチェーンを地域の中で育てていく余地もありました。もちろん、強みを伝えるだけで企業を迎えられるわけではありません。来ていただく以上、企業が本業に集中できる環境を整えることが招く側の当然の務めだと考えてきました。国との調整、土地利用や地元との調整、大学や県内企業との関係づくり、サプライチェーンの紹介、人材供給の仕組みづくり、さらには周辺道路の整備まで、企業が余計な心配をせず事業そのものに集中できるようにする。そのために県としてできる限りの支援をしてきました。そうした地道な働きかけと環境整備が一つにつながった先に、カナデビア社の山梨県内への投資が実現したのです。

自信を持って、企業を迎えられる環境を

期待されるのは、水素の地場産業化と地域経済の変化

カナデビア社の製造拠点が山梨県に整備されることは、これまで実証段階で積み上げてきた水素の取り組みを、産業化へと進める大きな一歩になります。積み上げてきた知見に、水電解スタックの量産という製造のピースが加わることで、P2Gシステムの普及はより現実的なものになっていきます。技術として成立するかを確かめる段階から、どの産業に、どの規模で、どのように展開していくかを検討する段階へ。カナデビア社の投資は、山梨県の水素戦略を次のステージへ押し出す力になり得るのです。

その変化は、地域経済にも波及していくと考えています。水素製造装置の製造には、部品、材料、配管、設置、メンテナンスなど、多くの周辺ビジネスが関わります。県内企業がそうしたサプライチェーンに参画できれば、新たな取引機会が生まれ、雇用の創出や人材育成にもつながっていくでしょう。また、同じ地域の中で装置をつくり、水素を使う環境が整うことで、利用の現場で見えてきた課題や改善点を、製造側へ素早く戻すこともできるようになります。農業の熱利用、食品加工、施設の熱源、安定した電源供給など、水素の活用先はすでに多様な領域へ広がり始めています。重要なのは、水素が単なる脱炭素技術にとどまらず、地域産業の課題を解決し、その知見が次の技術開発や利用拡大へつながっていくことです。そうした循環が生まれることで、水素は特別な実証テーマではなく、地域経済の中に組み込まれた産業へと育っていくのだと思います。

カナデビア社とともに、山梨を水素社会に向けた知の拠点へ

山梨県が今後目指しているのは、水素に関する「知の拠点」です。すでに県内では、研究から始まり、実証を経て、社会実装に向けた取り組みが進み始めています。その中で得られたノウハウや運用の知見を、県内に閉じるのではなく、国内外へ広げていく。世界の水素社会づくりに貢献していくことが、山梨県の目指す姿です。そのための実行母体として、産学官連携による水素コンソーシアムを設立しました。カナデビア社も含めた関係者が連携し、水素を実際に供給し、運用できる人材を育てること、社会実装に必要なルールや仕組みを研究すること、現場で蓄積された実装の知見を共有することに取り組んでいきます。

さらに、国際水素サミットの開催は、山梨県の取り組みを世界へ接続する重要な機会になります。世界各国の自治体、研究機関、企業、政策関係者が山梨県に集まり、水素の実装に関する課題や知見を共有することで、山梨県は国際的にも水素の実用化を学び、相談し、事業につなげる場所として認知されていくはずです。そこにカナデビア社が関わることは、同社の水電解装置や水素製造技術を世界のニーズと結びつけることにもつながります。山梨県で学んだ人材が各国へ戻り、培われた運用の知見をもとに水素の導入を進めていく。その時、山梨県で動くP2Gシステムやカナデビア社の技術は、世界展開の基盤になり得ます。山梨県に進出する企業にとっての価値は、研究機関や県内企業との連携、行政の伴走支援、サプライチェーン形成にとどまりません。世界的な水素市場への接点を持ち、産業そのものを共に育てていけることこそが、大きなメリットです。山梨県は、カナデビア社をはじめとする企業とともに、水素を地域の産業にし、世界へ広げるパートナーでありたいと考えています。

カナデビア社とともに、山梨を水素社会に向けた知の拠点へ