Interview

50年の「水電解装置(水素発生装置)」技術
を量産へ。カナデビアが水素社会の扉を開く

Kanadevia

Profile

山本 淳一
(やまもと じゅんいち)

カナデビア株式会社
脱炭素化事業本部長

1969年大阪府出身
1995年京都大学大学院工学研究科 環境地球工学専攻修士課程修了後、日立造船(現:カナデビア)入社
2013年11月~2017年1月、2018年4月~2021年3月、Kanadevia Inova社へ出向
2022年環境事業本部海外環境ビジネスユニット長を経て
2024年執行役員 脱炭素化事業本部長(現職)

Profile

山本 淳一
(やまもと じゅんいち)

カナデビア株式会社
脱炭素化事業本部長

1969年大阪府出身
1995年京都大学大学院工学研究科 環境地球工学専攻修士課程修了後、日立造船(現:カナデビア)入社
2013年11月~2017年1月、2018年4月~2021年3月、Kanadevia Inova社へ出向
2022年環境事業本部海外環境ビジネスユニット長を経て
2024年執行役員 脱炭素化事業本部長(現職)

2024年10月、日本の重工業の一翼を担ってきた「日立造船」が、その名を「カナデビア」へと改めた。「奏でる」とラテン語で道を意味する「Via」を組み合わせた新社名には、多様な技術を調和させ、人類と自然が共生する新しい道を切り拓くという強い意志が込められている。その新生カナデビアが全社を挙げて取り組んでいるのが、「水電解装置(水素発生装置)」の量産化プロジェクトだ。経済産業省「GXサプライチェーン構築支援事業」に採択され、年間1GW(ギガワット)の生産能力を持つ水電解スタックの量産拠点が山梨県都留市に建設される。50年の研鑽が結実するこの取り組みの意義と展望を、脱炭素化事業本部長の山本淳一氏に聞いた。

水素社会は「待つのではなく、自ら開く」
― 50年の技術を量産へ

社名変更という歴史的な転換期に、水素事業を「成長の柱」に据えられました。長年プラント事業を牽引してきた貴社が、今このタイミングで大規模な量産投資に踏み切った背景を教えてください。

当社の水電解技術には50年の歴史があります。2000年には「HYDROSPRING®」という製品を世に出しましたが、当時はまだ水素への関心は限定的でした。1881年の創業以来、造船・鉄構・プラントなど、時代のニーズに応じて事業を進化させてきた当社が、今まさに脱炭素化と資源循環へ大きく舵を切っています。水素事業はその中核であり、環境事業に続く「成長の柱」として全社を挙げて推進しています。

山梨県都留市に建設する新工場への投資判断について、社内ではどのような議論があったのでしょうか。また、経済産業省の支援はどのような意味を持ちましたか。

経営戦略会議では大きな議論がありました。脱炭素化の流れには不確実性が伴い、特に昨今の世界情勢を見ればその不確実性は増している――そうした声も当然ありました。しかし、技術開発や製造能力の拡大は一朝一夕では成し遂げられません。一定のリードタイムが必要な以上、今まさに動き出すべきタイミングだという確信が、最終的に全メンバーの賛同を得ました。全員から「全社でこれを支えていく」という言葉を直接いただいたことは、今でも胸に深く残っています。

その決断をさらに確かなものにしてくれたのが、経済産業省「GXサプライチェーン構築支援事業」への採択です。水素社会の実現は「待つ」のではなく「自ら開く」もの――その思いを国が後押ししてくれたことで、不確実性に対して予見性を持って投資できる環境が整いました。山梨県都留市という立地も、同県が水素社会に向けた施策を強力に推進しているという背景があってこそです。研究開発のフェーズを終え、いかに早く、安く、高品質に供給できるかという「量産」のフェーズへ。カナデビアの本当の挑戦は、今ここから始まります。

水素社会は「待つのではなく、自ら開く」― 50年の技術を量産へ

再生可能エネルギーの「変動」を力に変える「PEM型」と職人技の競争優位

貴社が量産化を進める「PEM型(固体高分子型)」の水電解装置(水素発生装置)は、具体的にどのような強みがあるのでしょうか。

PEM型の最大の強みは、再生可能エネルギー特有の「変動」に対する高い追従性です。太陽光や風力は天候によって発電量が激しく変動しますが、PEM型はその変化に合わせて迅速に出力調整を行うことができます。つまり、再生可能エネルギーの特性をしっかり受け入れることができる装置です。加えて、非常に純度の高い水素を製造できること、設置面積が小さく済むコンパクトな設計であることも大きな利点です。この「高追従性・高純度・コンパクト」という特徴が揃っていることこそが、私たちがPEM型の普及を確信している理由です。

「スタック」の製造において、貴社ならではの技術的な強みはどのようなところにあるのでしょうか。また、量産化に向けたチャレンジについても教えてください。

当社の強みは、長年の開発知見に基づく「インテグラル型(すり合わせ型)」の設計技術にあります。水とガスを均一に流し、漏れを許さない――この精緻なすり合わせの積み重ねこそが、長年にわたって圧力容器や大型プラントを手がけてきた当社の真骨頂です。昨年は国内最大規模となる6MWの装置を山梨県に設置し、現在実証運転を進めています。実績が技術の完成度を証明しています。

量産化に向けた最大のチャレンジは、これまで熟練の手作業で精度よく仕上げてきた製造工程の自動化です。新工場では画像診断などのDX技術を導入し、トレーサブルな製造管理システムを構築することで、品質の安定化とコスト低減を同時に実現します。ただし、いきなり量産工場を稼働させるのではなく、大阪の現行工場でまず自動化設備の開発・検証のステップを踏んだうえで山梨の工場へと展開していく計画です。単なる部品の供給にとどまらず、プラント全体のエンジニアリングを熟知した当社だからこそ提供できる、使いやすく信頼性の高い「心臓部」を、世界に届けていきます。

再生可能エネルギーの「変動」を力に変える「PEM型」と職人技の競争優位

水電解スタック量産工場の外観イメージ図

中東から欧州まで、日本の技術で「水素の道」を切り拓く

グローバル市場を見据えたとき、どのような戦略を描いていますか。特に重点的に展開を考えている地域や、現地での展開方法について伺えますか。

中東情勢をはじめ世界が揺れ動く今、エネルギーの安定確保はどの国にとっても喫緊の課題です。だからこそ、再生可能エネルギーを自国で水素に変えて貯蔵・活用できる技術の重要性は、かつてなく高まっています。グローバル展開においては、再生可能エネルギーを豊富に供給できる地域を優先的に進める考えです。具体的には、すでにメタネーション事業で連携実績のある中東地域、そしてインド・東南アジアを重点ターゲットとして推進しています。欧州については関係会社のカナデビアイノバと連携し、バイオガス事業との組み合わせも強みとなっています。

私はかつて英国など欧州に6年強駐在し、現地のプラント建設にも携わってきました。その経験を活かして、この水素事業の海外展開を進めていきます。その中では、「現地のニーズにいかに迅速に応えるか」が重要であり、現地パートナー企業と広くアライアンスを組んだ体制を構築して、安心して装置を使い続けていただけるようアフターサービスにも力を入れながら進めていく方針です。

このプロジェクトがもたらす社会的なインパクトと今後の展開についてどうお考えですか。

私たちが目指しているのは、セルスタックの供給だけではありません。当社グループが保有するメタネーションやバイオガスシステム、海水淡水化設備といった脱炭素関連技術と水電解装置(水素発生装置)を組み合わせ、ワンストップのソリューションとして国内外に展開していく構想です。プラント全体のエンジニアリングを熟知した当社だからこそ、こうしたシステム統合が可能です。

社内体制としても、脱炭素化事業本部内に「水素事業推進室」を新設し、企業間のアライアンスや官民連携の推進を強化しています。世界情勢が不安定ななかでも脱炭素化の歩みを止めてはならないという思いは変わりません。水素社会の実現は「待つ」のではなく「自ら開いていく」もの。都留市の工場を起点に、カナデビアの技術を世界の水素サプライチェーンに組み込んでいく。その確かな手応えを今まさに感じながら、日本の水素技術が世界で活用される未来を描いています。

やりがいと使命感のスタートライン、次世代へつなぐ未来

最後に、今後の展望と、山本本部長がこの事業にかける個人的な想いをお聞かせください。

私が入社したのはもう30年以上前のことですが、当時から環境問題や化石燃料依存の危うさは叫ばれていました。大学で工学を学ぶ中で「ものを作ることと、地球環境はつながっている」と強く意識するようになり、環境に貢献したいという思いを胸に入社しました。それは今に始まったことではなく、私のキャリアをずっと貫いてきた軸です。今回、水素技術を通じて直接脱炭素化に貢献できる機会を得たことは、まさに自分がやるべきフィールドに立てたという実感があります。非常に重いタスクですが、これほどやりがいのある仕事はありません。

この事業が社会にもたらす意味を、どのような言葉で表現されますか。

都留市の工場建設は、私たちにとってのゴールではなく、本当の意味での「スタートライン」です。水素の社会実装に向けた大きな一歩を踏み出した――その使命感を、関係者一同が深く心に刻んでいます。これからチーム一丸となって一歩一歩ステップを積み重ね、水素社会の実現を牽引することを通じて、脱炭素化の必要性を国内外に強く発信していきたいと考えています。
カナデビアが目指す未来を自分の言葉で表すなら、「技術と誠意で目指す、レジリエンスな未来」です。私たちの技術と、その技術を生かすための誠意ある姿勢をもとに、次の世代も、そのさらに次の世代も、豊かな社会を享受し続けられるような未来につなげていく。それがカナデビアの使命であり、私自身の願いでもあります。

カナデビアからのメッセージ

採用希望の皆様

社名が変わり、私たちはいわば「第二創業期」にあります。140年超の歴史を持つ企業の安定感と、ベンチャーのような事業スピード。その両方を味わえるのが、今のカナデビアの水素事業です。あなたの技術と熱意で、地球の未来を『奏でて』みませんか。世界を舞台に挑む仲間を心から待っています。

業界のステークホルダーの皆様へ

水素社会の実現には、官民の枠を越えたアライアンスが不可欠です。カナデビアは水電解装置(水素発生装置)をはじめとする総合メーカーとして、高品質な『心臓部』を提供し、皆様と共に水素サプライチェーンを構築していきます。脱炭素という共通のゴールに向かって、手を取り合い、新しい市場をつくり上げましょう。

カナデビア社員の皆様へ

皆さんの日々の努力が、都留市の新工場という形になり、やがて世界中の水素プロジェクトの核となります。私たちは単なる機械を作っているのではありません。社会の安心と、地球の未来をつくっているのです。このかつてない挑戦を、明るく、元気に、チーム一丸で完遂させましょう!

カナデビアからのメッセージ

カナデビア株式会社 コーポレートサイト